「アザミウマ」とは?防除するために知っておきたい正しい選択

野菜、果実、花などを栽培していると葉の表面に白い斑点や縮れ、脱色が起こる。
「目に見えない。些細なことだから」と言って症状を放置してはいけない。

これらの症状が見られれば、アザミウマの被害を疑おう。

アザミウマとは?

アザミウマは体長が0.8〜2.0mmの微細な昆虫である。
植物の隙間に潜む性質があるため、肉眼で発見することが困難な場合が多い。

また、繁殖のスピードが異常に早く、ウイルス病を媒介するため、農作物に大きな被害を及ぼす。

アザミウマは、『シマアザミウマ科1種』『アザミウマ科31種』『クダアザミウマ科12種』の全44種が存在する。

中でも農作物に重大な被害を及ぼすのは以下の5種
・ミナミキイロアザミウマ
・ネギアザミウマ
・ミカンキイロアザミウマ
・ヒラズハナアザミウマ
・チャノキイロアザミウマ
そのどれもが微細で姿も似ている。

被害を防ぐために早期発見はもちろん、形態や被害症状から種をいち早く判別することが望ましい。

「アザミウマ」名前の由来は?

この虫は、「アザミウマ」またの名を「ウマ」と呼ばれる。
これは、明治時代のころ、子どもがアザミの花を叩いて、「ウマ出よ、ウマ出よ」とはやし立てながら出てきたアザミウマの数を競って遊んだことに由来する。

農家の間では「スリップス」と呼ばれるもあるが、アザミウマの英名のことで「Thrips」からきたものである。

『スリップス=アザミウマ』は知らなければ混乱をきたす場合もあるので覚えておくと良い。

農薬選びの注意すべき点

アザミウマの被害を防ぐ手段で最も有効なのものが、農薬の散布である。

農薬ラベルの対象害虫に「アザミウマ類」「ネギアザミウマ」「ミカンキイロアザミウマ」などと記載されているものを選択し、希釈濃度を守る。

ただ、薬剤散布するだけで安心してはいけない。
多くのアザミウマが農薬に対して強くなっているからである。
これを薬剤抵抗性(昔は有効であった農薬が散布を繰り返すうちに農薬に強くなり殺虫効果が低下する)という。

さらに、アザミウマの種によって、農薬に対する強さが異なってくることも覚えておこう。
例えば、「A剤はネギアザミウマには効果が高いが、ミカンキイロアザミウマには効果が低い。」という状態が起こりえる。
『どの農薬が有効なのか』『防除したいアザミウマはどのような種なのか』をしっかりと把握する必要がある。

〈Point〉
薬剤使用の際は、記載の値以下で散布することは避けるべきである。
(希釈倍率が2000〜3000倍の場合、3000倍以上の濃度で散布する)
→抵抗性を潜在的に持つ害虫を温存して抵抗性の発達を早める可能性があるため。
【参照:薬剤抵抗性農業害虫管理のためのガイドライン

周辺の雑草、菜園、育苗施設が温床になる!?

アザミウマの寄主範囲は非常に広い。
イネ、イモ類、マメ類、野菜類はもとより、果樹、チャなどの特用作物、花き類や樹木類にも発生する。

アザミウマが被害を及ぼす作物は、
・ミナミキイロアザミウマ→40種
・ネギアザミウマ→44種
・ミカンキイロアザミウマ→66種
・ヒラズハナアザミウマ→82種
・チャノキイロアザミウマ→67種
【参照:農林有害動物・昆虫名鑑増補改訂版

さらに多くの雑草にも発生する。

つまり、自分の畑や施設周辺の雑草や家庭菜園、緑地に目を向ける必要がある。
多くのアザミウマはこのような周辺から飛来する。

〈育苗施設〉
同一施設内で他種の野菜苗や花苗などが育苗されているが、これらにもアザミウマは発生する。
また、育苗施設は閉鎖的で暖かいことから年中発生する可能性がある。

〈連作・混作〉
連作でアザミウマが連続して発生することは想像に難くない。
混作であっても同様で、アザミウマは作物間を行き来し、一方の栽培が終了しても、もう一方の作物で生き残る。
また、連作や混作を続けることで農薬に対する薬剤抵抗性は増す。

アザミウマによる被害を抑えるためには?

まずは、発生しているアザミウマの種を判別することが最優先である。
種に対して効果的な農薬を散布するのが望ましいであろう。

また、農薬は同じものを使用するのではなく、ローテーションで使用する。
新しい農薬の使用をここと見るのもいいかもしれない。

農薬の使用以外でも、圃場の整備を行うのも有効だ。
特に周辺の雑草や収穫残渣の管理を徹底的に行うことは、アザミウマ発生を抑えることに繋がるであろう。

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