ネギハモグリバエの生態や注目すべき防除法について、幅広いアプローチで紹介します。さらに、新種b系統の特徴と現状の知見も解説しています。農業に携わる方や自然環境に興味のある方にとって、必見の情報が盛りだくさんです。ネギハモグリバエを適切に防除するために、知識を深めましょう。
ネギハモグリバエとは?
ネギハモグリバエの被害は、気温が高い7〜9月に多発します(主に食害を引き起こす幼虫が活発)。ですが、成虫は5月から10月にかけて活動が盛んなため長期的な防除が必要です。
また、ネギハモグリバエは葉の緑部を食害します。そのため、葉ネギに寄生された場合には商品価値が著しく低下します。病気の媒介者である記述はありませんが、被害が大きくなると葉が枯れたような状態になるため、防除が必要です。
以下に『特徴と生態』『新種のb系統』について確認しましょう。
特徴と生態
ネギアザミウマの特徴として、成虫は体長約2mmで胸部と腹部が黒色、その他の部分は淡い黄色です。成虫は葉の内側に産卵し、孵化した幼虫は内側から食害を行います。成熟幼虫の体長は約4mmになり、葉肉を食べて成長します。蛹は葉から離れ、地表または地中で約3mmの大きさとなります。
また、卵~蛹における発育零点は11.5℃、有効積算温度は345.5日度です。このため、成虫の発生回数は気温によって左右され、だいたい月に1度のペースで多発します。年換算すると4〜6回程度です。
発育期 | 発育零点(℃) | 有効積算温度(日度) |
卵 | 8.9 | 48.9 |
幼虫 | 10.7 | 88.9 |
蛹 | 11.6 | 232.2 |
卵〜蛹 | 11.5 | 345.5 |
ネギハモグリバエはネギ属の野菜にのみ寄生する害虫です。この害虫に注意が必要な野菜は、主に『ねぎ』『玉ねぎ』『ニンニク』『ニラ』などが上げられます。
食害痕から見抜く「新種B系統」とは?
これまでの潜葉痕(ハモグリバエの幼虫が食べた痕)は1匹〜数匹が残したまばらな痕でしたが、平成28年度頃から京都府の路地栽培で以前とは異なり、全体的に白化する潜葉痕が見つかりました。調査の結果、以前と異なる遺伝子を持つ系統であることが判明。現在では、これらをB系統と呼んでいます。
B系統の潜葉痕は初期段階では以前の系統と同じく不規則な白線状ですが、次第に複数の潜葉痕が癒合し、葉全体が白化する特徴があります。なお、B系統の潜葉痕は連続した痕跡を10数匹が残す形で形成されます。
成虫や幼虫の外見はB系統と以前の系統は同じであり、区別が難しいです。詳細についてはまだ不明な点もありますが、報告によれば、発育速度に違いがあることが示唆されています。
現時点では、薬剤感受性の違いについては報告されていないため、薬剤による防除に関しては、これまで通り「ネギハモグリバエ」と「ハモグリバエ系統」に対して有効な薬剤を使用することが推奨されています。
ネギハモグリバエの防除法
ネギハモグリバエによる被害を防ぐため、農薬散布が一般的に行われていますが、その使用にはさまざまな意見や懸念が存在します。同時に、最近では無農薬栽培も注目を集めています。
今回は、これら「農薬を使用するアプローチ」と「農薬を使用しないアプローチ」の2つの特徴や方法について詳しくご紹介していきます。どちらも重要な視点となりますので、一緒に確認しましょう。
《検証済み》効果の高い2つの農薬
ネギハモグリバエに対して効果が実証されている農薬は数多くあります。それ故に、どの農薬を使用するか迷うはずです。以下に示す農薬は実験の結果により、効果が特に期待されている農薬です。参照元の掲載していますので、農薬選びの指標にして下さい。
参照元:ネギ葉身部浸漬法によるネギハモグリバエの殺虫剤感受性検定法
ビニフェート乳剤(CVP乳剤)は失効農薬となっています。
トリガード液剤(シロマジン液剤)は現在の登録作物一覧にネギがないため、選定していません。
ベストガード水溶剤
ベストガード水溶剤は、ネギハモグリバエやネギアザミウマなどの害虫を長期間防除することができ、高い効果が期待されています。また、マメハモグリバエやミカンキイロアザミウマの初期密度を抑制することができる効果があるとされています。
さらに、高い浸透移行性とトランスラミナー効果を兼ね備え、カメムシ目害虫などにも効果を発揮することができる万能な農薬です。前日まで使用可能な作物も多く、使いやすさにも優れています。
リーフガード顆粒水和剤
リーフガード顆粒水和剤は、たまねぎやねぎのネギアザミウマ防除のローテーションの一剤として有効であり、ネギハモグリバエにも効果が期待されている農薬です。また、コナガの成虫にも効果があるとされています。茎葉散布でナメクジ類を同時防除でき、顆粒状で水に溶けやすく粉立ちも少ない薬剤です。
主成分のチオシクラムによって作用し、効果が長期間持続することが特徴です。
医薬外用劇物に指定されていますので、使用前には必ず注意事項を確認するようにして下さい。
農薬を使わない防除法
オーガニック野菜を栽培する際は、農薬を使わない方法を検討することが必要です。また、病害虫防除の課題には、薬剤抵抗性を発達させた害虫への対処が残っています。
そこで、今回はこのような課題に対処するために、代表的な3つの防除法を紹介していきます。これらの方法を取り入れることで、より効果的な病害虫の防除が可能となります。
防虫ネットを利用する
防虫ネットの目合いを細かくすると、ネギハモグリバエによる被害軽減効果が高まることがわかっています。結論を述べると、0.8mm目合いの防虫ネット被覆が最も効果的です。
1.0mm目合いの防虫ネットでは、80%以上のネギハモグリバエが通過するのに対し、0.8mm目合いでは通過できる割合は15%以下に大幅に軽減されます。
0.4mm目合いの防虫ネットでは成虫が通過する心配はありませんが、夏場の気温上昇が著しいことが問題です。さらに、0.8mm目合いの場合は、農薬散布の効果が期待できます。
また、防虫ネットの色に関しては、ネギアザミウマという同じ時期に多発する害虫にも効果を発揮する赤色が望ましいと考えられます。
黄色の粘着板を利用する。
ネギハモグリバエに対しては、黄色の粘着板を使用するのが効果的です。この黄色の粘着板は、コナジラミ類、アブラムシ類、ハモグリバエ類、アザミウマ類など、さまざまな害虫を引き寄せます。
また、黄色の粘着板と同じ効果が期待できる方法として、黄色のゴミ袋などに粘着スプレーを吹きかける方法があります。これによっても害虫を誘引し、捕獲することができます。
ちなみに、黄色の粘着板には主に雄が集まる傾向があるようです。この情報は蛇足ですが、興味深い事実ですね。
天敵を利用する
ネギハモグリバエに対しては、「ハモグリコガネコバチ」、「ネギハモグリヒメコバチ」、「カトウヒメコバチ」という3種類の寄生蜂が有効です。
これらの寄生蜂を確保するために、ハゼリソウを利用する方法が効果的です。ハゼリソウには、ネギには無害な「ナモグリバエ」という害虫が発生します。このナモグリバエを捕食するために、寄生蜂がハゼリソウに飛来します。その中には、ネギハモグリバエに対して有効な3種類の寄生蜂も含まれています。
特に、ハゼリソウを通常よりも遅めに生育させることで、7月頃まで寄生蜂を確保したままにすることができます。そして、ネギに発生したネギハモグリバエを寄生蜂に捕食してもらうのです。
この方法は、ヨーロッパでは既に検証された活動として知られています。バンカー法と呼ばれるこの手法は、天敵の定着率や生存率を高める効果があります。
まとめ
ネギハモグリバエはネギアザミウマと同じく、ネギ属の野菜への被害が多い害虫です。薬剤抵抗性を持ちやすいため、防除が難しい害虫でもありす。また、近年ではB系統の発生が拡大していて、防除の必要性が高くなっているのも事実。
この記事を確認しながら、出来る防除方法をひとつずつ試してみて下さい。きっと、あなたの環境に合った防除方法が見つかりますよ。
ネギハモグリバエに関するQ&A
ネギハモグリバエに効く農薬は?
農薬ラベルに『ネギハモグリバエ』『ハモグリバエ類』と掲載されているものを使用します。害虫の薬剤抵抗性を考慮し、農薬はローテーションで使用しましょう。また、効果の実証実験が行われている農薬は「ベストガード水溶剤」「リーフガード顆粒水和剤」です。
ネギハモグリバエの防除時期はいつですか?
成虫の発生に合わせた、5月から10月に行いましょう。食害痕が見られた場合は、時期に関係なく、直ちに対策を講じる必要があります。農薬の散布や防虫ネットの使用など、栽培スタイルに合った防除を行いましょう。